社会課題詳細
cover-食料自給率の低下
食と農林水産業

食料自給率の低下

目次

概要

日本の自給率は下げ止まり、安定供給に向け引き上げは必須

日本のカロリーベース食料自給率は、1965年度の73%から2021年度は38%と大きく下落。米の消費が減少し、飼料や原料を海外に依存しているパンや肉類の多い食事に変化したこと、ファストフードやコンビニエンスストアの拡大などにより、長期下落傾向が続いています。 食料を輸入に頼ることは、輸入先の国の災害や治安情勢に供給が左右されるため、安定供給の面で大きな不安材料を抱くことになります。世界的な人口増加に伴い食糧需要が高まる中、輸入がストップすれば国内の食料価格高騰は避けられません。 さらに、国内における一次産業の担い手不足も深刻です。農林水産省の調査によれば、普段から農業に従事している「基幹的農業従事者」の数は、2020年時点で136万3千人と、10年前に比べ3割以上減少しています。農業従事者の平均年齢も67.8歳で10年前より1.6歳アップしており、高齢化が進んでいます。 農林水産省は、2030年に食糧自給率を45%まで引き上げることを目標に掲げています。食料安全保障の観点からも、地産地消の推進はもちろん、集落営農の促進やテクノロジーの活用など生産の効率化も重要となります。

日本の低い食料自給率

農林水産省「諸外国・地域の食料自給率等(令和3年度)」

「食料自給率は」、国内で消費される食べ物が、どのくらい国内生産によって自給できているかを示す割合です。 農林水産省によると、日本のカロリーベース食料自給率は1965年度は73%でしたが、2021年度は38%。他国のカロリーベース食料自給率比べてみても、カナダ233%、アメリカ121%、ドイツ87%と非常に低く、主要先進国のなかでも最低の水準であることが知られています。 日本の食料自給率は長期下落傾向が続いており、食料安全保障の観点からも「2030年に食糧自給率を45%まで引き上げ」という目標に向け、早急な対策が求められています。 注1)カナダ・アメリカ・ドイツのデータは2019年のFAO ""Food Balance Sheets""等をもとに農林水産省で試算したもの。 注2)数値は暦年(日本のみ「年度」)で、カナダ・アメリカ・ドイツは西暦2019年のデータを用いて比較

WHY

急激な食生活の「欧米化」

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JICA「日本の食料自給率が下がってしまった理由」

日本の食料自給率低下は、第二次世界大戦以降の、急激な食生活の「欧米化」が大きな要因とされています。 日本古来からの主食であった米の消費が減少し、変わって小麦を原料とするパンが主食として登場しました。現在、品目別でみると「米」の自給率は主食用において100%なのに対し、「小麦」はわずか14%。国内生産の小麦だけでは供給が追いつかず、輸入に頼らざるを得ない状況です。 また、昔と比べ、おかずについても魚・野菜中心から、飼料や原料を海外に依存する肉類の多い食事が増加。食生活における需要の変化や技術発展に伴って、ファストフードやコンビニエンスストアも拡大しています。 例えばハンバーガーに欠かせない「牛肉」の品目別自給率は36%で、輸入に頼っている飼料で育ったものを除外すると10%にまで下がります。 さらに、こうした需要の増加だけではなく、供給力の低下も大きな課題です。農業においては、田んぼと畑の面積が住宅地に変わり減少したことや、農業従事者数が約50年前に比べ約80%減っていること、従事者の高齢化が進み65歳以上の人が約60%を占めているなどの労働力不足が起きています。 注)数値はいずれも農林水産省「食糧自給表」2018年のもの

ステークホルダー

政府や生産者はもちろん「食べものを買う人」全てがステークホルダー

国と地方自治体 農林水産省や消費者庁を中心に、各専門家と連携しながら、減少傾向にある農林水産に携わる生産者を支えたり増やしたりする仕組みの他、国際的な政治力・経済力をつけるなど、自給率の向上と輸入リスクの低減に向けた法制度の整備が求められています。 生産者、食品に関わる事業者 生産者や事業者が、普段から政府や各業界団体が示した指針に則って対策し、生産・加工・製造段階での規格やその具体的な表示をすることで「安心・安全」な食料供給を行うことは非常に重要です。 また、地産地消を促すためにも、商品開発や販売の仕方や見せ方などにおいても生産者・事業者による努力が求められます。 消費者 私たち人間は食べないと生きていけませんから、完全に自給自足的な生活をしているごく一部の人を除いて、全ての人が消費者と言えます。 消費者として、食に関する正しい知識を学び、たとえば普段から地元で採れた野菜を買うなど、高いリテラシーに基づいた消費・購買意識を培うことはとても大切です。 学校などの教育機関 食に関する専門家として児童生徒の栄養の指導と管理をつかさどる栄養教諭を中心に、学校における食育の推進などが進められています。 食に関する指導は、給食の時間をはじめとして学校教育活動全体の中で体系的、継続的に行われるべきであり、栄養教諭を中心に、食に関する指導の全体的な計画に基づき、全教職員が共通理解の下に連携・協力しつつ指導を展開することが重要です。

解決策

いち消費者としてのリテラシーを身につけることも大きな一歩

食料自給率の向上には、各ステークホルダーがしっかりと責任を果たすとともに、それぞれの努力を惜しまないことが重要です。 食の生産に携わる人たちのみならず、食べのものを買い、食べる私たち一人ひとりが、いち消費者としてリテラシーを身につけることも大きな一歩と言えるでしょう。 食に関する正しい知識を学び、日本の食料自給率にまつわる現状や自分や家族が食べるものに関心を持つことは、自身の健康を守ることや生産者の生活を支えること、ひいては日本ならではの食文化を守り継ぐことにもつながります。

2023.02.16更新
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国内で消費された食料がどれだけ国産でまかなわれたかを示す食料自給率は、昨年度カロリー基準で37%となり、平成30年度などと並んで過去最低となりました。

農林水産省によりますと、昨年度の食料自給率はカロリー基準で前の年度に比べて1ポイント下がり、37%となりました。

これは、平成5年度や、平成30年度と並び、過去最低です。
昨年度の食料自給率は37% 平成5年度や30年度と並び過去最低にNHK
岸田総理大臣は17日、石川県を訪れて地元の住民と車座で意見を交わし、ウクライナ情勢に伴う食材価格の高騰などが続く中、食料自給率の一層の向上や農業の国際的な競争力の強化に取り組んでいく考えを示しました。
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