エネルギー自給率
目次
概要
日本のエネルギー自給率はOECD35ヵ国中34位、エネルギーベストミックスの実現が鍵
私たちが日々当たり前に使っている電力は、日常生活や社会・経済活動を維持していくために欠かせないものですが、日本のエネルギー自給率は他国と比べても低い水準となっています。 資源エネルギー庁によれば、2018年の日本の一次エネルギー自給率は11.8%でOECD35ヵ国中34位であり、資源の多くを他国からの輸入に頼っています。特に福島第一原発の事故以降、輸入化石燃料による火力発電への依存が大きくなったことから、エネルギー自給率は2014年には一時6.4%まで減少しました。 石炭・石油・天然ガス(LNG)の化石燃料は、輸入先国の社会情勢などが供給に大きな影響を与えます。為替の影響で価格も変動するため安定的な資源の確保が大きな課題です。 「第6次エネルギー基本計画」では、発電における水力、太陽光、風力などの再生可能エネルギーの割合を現在の18%から、2倍の36~38%まで引き上げる目標を打ち出しています。 一方で、再生可能エネルギー発電も天候に左右されたりコストがかかったりと、それぞれ短所があります。こうした短所を複数の発電方法を組み合わせることで補い合う「エネルギーベストミックス」の早期実現などが求められています。
"先進国"日本の低いエネルギー自給率。一次エネルギーは他国に大きく依存

エネルギー資源庁「2020—日本が抱えているエネルギー問題(前編)」 エネルギー資源庁「令和2年度 総合エネルギー統計確報 (2022)」
資源エネルギー庁によれば、2018年の日本の一次エネルギー自給率は11.8%で、OECD 35ヵ国中34位。 同調査におけるOECDの他の国を見てみると、一次エネルギー自給率 1位のノルウェーは700.3%、5位のアメリカは97.7%、22位のドイツも37.4%と、大きく差が生じています。 この年の日本の化石エネルギー依存度は85.5%とされており、化石燃料の多くを他国からの輸入に頼っている状況です。
WHY
エネルギー自給率の低さはなぜ問題なのか?

国際エネルギー機関「世界のエネルギー見通し2021」 東京電力ホールディングス「平均モデルの電気料金」
世界的にも脱炭素社会の実現をめざして化石燃料を削減する動きが強まる中、LNGなどの価格高騰リスクをふまえると、今後はエネルギーに占める化石燃料を一層減らしていくことが求められます。 こうした化石燃料のうち約4割を占める原油は80%以上を中東地域に依存しています。これら地域の国際情勢は複雑で、近年でも「アラブの春」や「イラン核問題」といった地政学的リスクが生じています。 国際エネルギー機関(IEA)などでは、原油価格は、長期的には上昇する見通しを出しています。資源が安定的に供給されるか懸念があることはもちろん、価格が不安定な傾向にあるという問題点もあります。 実際のところ、東京電力管内の標準家庭の電気料金は2022年1月に7,485円になり、2021年1月と比べ1,168円、18.4%上昇しました。年初からの値上げ幅は大手電力10社平均で13.8%となり、その結果、10社ともに過去5年でもっとも高い水準に達しています。 脱炭素社会の実現をめざし世界的にも化石燃料を削減する動きが強まる中、LNGなどの価格高騰リスクを考えれば、エネルギーに占める化石燃料を一層減らしていくことが求められています。
ステークホルダー
持続可能な再生可能エネルギー供給のためには、地域連携が必要不可欠
①国・地方自治体 再生可能エネルギー(再エネ)の活用をさらに推進するためには、現在指摘されている土地利用や電力の系統接続の制約への対策を講じる必要があります。また、風力発電など新たな再エネ設備を設置する地方自治体では、地域のNPOや町内会などと連携して、適切な説明をすることが必要です。 ②企業(エネルギー供給事業者) 新たな再エネの開発・安定的な供給が求められています。また、地域に新たな電力設備を設置する場合は、安全や防災の面や、景観や環境への影響、発電が終了した時の設備の廃棄をどうするかなどについて、地域住民に適切な説明が求められます。 ③NPOなどの市民団体、地域住民 再エネ活用の推進には、広大な土地や住民理解が必要不可欠です。NPOなどの市民団体は、地域住民と事業者・地方自治体の架け橋となり、発電事業に関わっていく重要な役割も求められています。
解決策
再生可能エネルギーの活用推進とともに、既存電力との組み合わせ方の検討も必要
再生可能エネルギー(再エネ)を推進することは、エネルギー自給率の向上だけでなくCO2の削減にもつながり、脱炭素社会の実現につながります。さらなる再エネの供給を行っていくためにも、これまでに実用化されていない再エネも含め、革新的な技術の開発が必要です。 一方で、現時点で指摘されている土地利用や電力の系統接続の制約などについても、積極的な対策を講じていく必要があります。 また、再エネが長期安定的に地域で定着していくためには、一カ所に集中せずさまざまな発電所が分散して発電する「分散型電源」として地域で活用され、安全・保安を追求し、地域との共生をはかりながら発電事業を進めていくことが求められています。 火力発電などの既存発電と再エネを組み合わせて短所を補い合う「エネルギーベストミックス」の早期実現も求められており、2050年のカーボンニュートラル達成に向け、各エネルギーをどう供給していくかが鍵となるでしょう。
