災害対策と復興支援
目次
概要
豊かな自然がもたらす厳しさと向き合うためには
豊かな自然と美しい四季に恵まれている日本は、その恩恵を受ける一方で、自然がもたらす厳しさとも常に向き合わなければなりません。近年では気候変動の影響も懸念されている他、災害リスク地域への人口集中などが大きな課題となっています。 国内における自然災害被害の内訳をみると、発生件数では「台風」が57.1%と最も多く、次いで「地震」、「洪水」となっていますが、被害額では広域に被害をもたらす「地震」が8割超を占めています。 これまでの地震や豪雨災害の被災者や被災地への復興支援と併せて、今後発生が予測されている大規模地震などに向け、ハード・ソフト両面において十全な災害対策を行うことが重要な課題です。
日本が「災害大国」と呼ばれる理由

出典:国土交通省「国土交通省の地震対策について」(平成31年)
国土交通省の資料によると、世界全体に占める日本の災害発生割合はM6以上の地震回数が20.8%、活火山数が7.0%、災害被害額では11.9%などと非常に高くなっています。 日本の国土面積が世界の0.25%であることを考えると、驚くべき数字です。
WHY
災害リスクを高めている複数の自然環境的・社会的要因

①日本の地理的・自然的条件 日本列島は4つのプレートが重なるところに位置しているため、プレート運動により地震や火山が引き起こされます。また、日本が属しているアジアモンスーン気候は、大雨などによる水害を発生させます。狭い国土のうち約70%が山地・丘陵に囲まれているため、土砂崩れなども起きやすい地形です。 ②グローバルな気候変動の影響 地球温暖化により大気の気温が上昇することで、大気中に含まれる水蒸気量が増加し、多くの文献などで降雨量が1~3割程度増加するという結果が出ています。また、海面水位の上昇による一定程度の海面水位の上昇、降雨量や強い台風の増加による高潮の増大や波浪の強大化、海岸においては高潮等による被害や海岸侵食等の深刻化も懸念されています。 ③人為的な山や丘陵地・埋立地 日本では、狭い国土を有効的に利用するために、人為的に山や丘陵地を造成し、海岸を埋め立てたり、トンネルを掘ったりなどして都市部を拡大してきました。その結果、河川や海岸、火山に接して都市や住宅が建てられることもあり、土砂災害や液状化現象などが発生しやすくなっています。道路やトンネルといったインフラの老朽化も進んでおり、災害時の経路確保が課題です。 ④東京一極集中による災害発生時のリスク 都市部に人口が集中すると、地震や水害などの災害発生時に甚大な被害が出るリスクが高まります。総人口の3割が集中する東京圏では、30年以内に首都直下型地震の発生が予測されており、建物の全壊及び焼失建物棟数が最大で約61万棟、死者数は約1万6,000人〜約2万3,000人に昇ると推計されています。
ステークホルダー
自然災害を0にすることは不可能。連携して防災・減災、被災後の支援を強化
①国と地方自治体 災害の発生リスクを抑えるためには、災害リスクを明らかにするとともに、土地の開発について都市計画で定めたり、保安林の整備や老朽化したインフラの修繕をしたりといった、国と地方自治体によるハード・ソフト面における施策の策定・実行が欠かせません。また、災害復興にかかる支援についても、長期的な計画に基づく継続的な支援が重要となります。 ②企業 企業が自治体や地域住民、NPOなどと連携することにより、企業が持つ科学技術などを応用した減災・防災が可能となります。さらに、事前に協定を結ぶなど、災害発生直後からの緊急支援対策の内容についても継続的に確認することで、地域における防災に対する共同共助意識の向上にも貢献することができます。 ③地域住民及び市民団体 日頃から、住民1人ひとりが防災・減災意識を持ちいざという時のために備えておくことで、災害が発生した時の被害を抑えることができます。また、災害復興にかかる支援においても、被災地ボランティアや緊急募金、正しい情報の理解と拡散など、市民が果たしうる役割が多くあります。
問題点
被災した地域に留まらない影響
災害によって引き起こされる影響には、さまざまなものがあります。 ①人命、人の生活に直結 災害は、多くの人の命を奪いうるものであり、それまでの日常生活を一変させるような大きな影響をもたらします。生活の拠点となる地域の基盤的機能の低下や住居の倒壊などにより、避難生活や仮設住宅での生活が長期に及ぶこともあるため、復興には継続的な支援が必要です。 ②経済的損失 再保険業界の世界大手・スイス再保険によれば、2019年の自然災害による世界の保険損害額は520億ドル(約5兆7000億円)で、このうちの3割を日本の損害が占めています。この年に日本を襲った台風19号が世界最大の損害額(80億ドル)をもたらし、次いで台風15号(70億ドル)という結果でした。 ③人流・物流への影響 災害により道路などの交通経路が遮断されると、人流や物流が滞り、被災地以外の地域にも大きな影響を与えます。特に発生が予測されている首都直下型地震など、人口や政治・経済・ビジネスの拠点が集中する地域では、災害により都市機能が著しく低下することで、他地域への二次的・三次的な影響が懸念されています。
解決策
1人ひとりが減災・防災意識を持つとともに、分野・立場を超えた連携を
自然災害を完全になくすことは不可能ですが、事前の防災・減災、発生時、発生後の復旧・復興プロセスにおけるさまざまな工夫により、災害発生リスクや被害を最小限に抑えることは可能です。 日頃から、近隣地域のハザードマップの確認や災害リスクに関する情報把握を心がけるなど、1人ひとりが減災・防災意識を持ち、いざというときのために備えておくことが重要となります。 災害は建物の倒壊など物理的な被害に留まらず、多くの命を奪い、残された被災者の心にも大きな影響を与えます。それぞれのステークホルダーが連携し、ハード・ソフトの両面から施策・対策を進め、災害の発生率や発生時の被害を抑えることが肝心です。
